タ・プロームは、アンコールトムの最外周の環濠から東に2kmほどに 位置する。かなり交通の便の良い 観光中心部寄りに位置して、いわゆる 小回りコースに組まれる事が多い。「小回りコース」とはアンコールトムの中心(バイヨン)から東側の 連絡橋「勝利の門」をくぐり、トマノン⇒ チャウ・サイ・テボーダ⇒タ・プローム⇒アンコールワット、という短めに廻る周回ルートの ことをいう。 |
一方、大回りコースもあり、今度は北門からプリア・カン⇒ニャック・ポアン⇒東メボン⇒プレ・ループ を観光しアンコールワットに至る、という大きめの周回ルートをさす。 両コースの 重なる部分は主要遺跡以外の終盤連絡路くらいで、内容は全く別物になる。 環七と環八のラーメン巡りが別であるのと同じ理論だ。 トゥクトゥクで廻るかたちに成ろうかと思うが、 時間配分的には、小回りが半日、大回りが1日近くといった所だろう。 勿論、個人差があり研究者やリリーフを丹念に見る目的ならそれ以上だが、 一般的な移動を含めた総括的な時間として、半日〜1日くらいは費やす事には成るだろう。 |
タ・プローム東側と西側にトゥクトゥクやバイクの駐車場があり、 敷地が長方形で道に沿った配置をしているので、小回りの場合はコースの便宜上、片側で降車し見学した後、 反対側で待機してた車両に再乗するパターンが多い。 |
『巨木と崩壊の共演』そんな言葉が最も良く似合う遺跡だろう。 熱帯雨林の 樹木の成長は巨石をも穿ち、積石をいとも簡単に積み木を崩したかの様に散石させる。 発見当初は、その景観の素晴らしさから敢えて人為修復は行わず、そのままの形で 保存しようという方針であっが、一連のアンコールワット遺跡群も やはり、倒壊の恐れから基礎部分の修復施工は必要不可欠な所まで迫っており 、現在、各国が各遺跡を 分担で修復をしている。 日本 アンコールワット西参道 バンテアイ・クディ フランス バプオーン ドイツ アンコールワット第一回廊 イタリア プレ・ループ インド タ・プローム |
内部の構成は東西に1000m、南北に600mの長方形のかたちで、 最外周にテラライトの基礎石で塀を作っている。こちらの色は真っ赤である。テラライト にも茶色と赤、そして黒と種類も様々のようである。 |
ジャヤヴァルマン七世が母の菩提を弔う為に造った仏教寺院であるが、後に ヒンドゥーに改宗している。碑文によれば創建は1186年とあり、寺院に12人の高僧と2700人の 一般僧が住み、その他、踊り子が1万2000人、周囲に300の集落と8万人の住民が 奉仕にあたったそうである。 |
ある一角に列ができている。巨木が屋根を覆い、根をおろした 先が二又に分かれ窓枠のような形に成っている。調度良く頭の高さに根の分岐があり、 観光客が間に入って記念写真する、という人気スポットだ。 巨木の種類は熱帯地方にある常緑高木で 榕樹(ようじゅ)という。樹冠以外に枝を生やさずグイグイと天に向かって成長し、高経は20m にもなる。邦名でガジュマルとも言う。通り名は「絞め殺しの木」 「でも、何で屋根から根を下ろせるんだろ?」 日本で見るようなコンクリを割って竹の子が芽吹く光景なら分かるが、 土や養分の無い石積みの屋根から発芽する道理がどうも理解できなかった。 『つまり、こんな穴に鳥が住みつくわけです』 |
カンボジアの内地は巨大な地震が無かった為に、幸いにも単なる石積みで 建築が成り立っていた。ただし、継ぎ石として石間に凹凸を作り、ある程度の強度を増す 技は駆使していたようだ。 『そこで、鳥が糞をする。種子が栄養を基にして発芽し、 一時的に根を張る事に成功します。そこからは地上に向かって猛成長』 「へー、なるほどね」 素直に関心。すると今度は、私の袖を引っ張り何処かへ引導してくれる。 巨木の前で彼女の歩調は止まり、 絡み付く根の隙間を指して、含みのある目線を送ってきた。どうやら、木々の間からデバター像がコチラを 覗いている、絵になるショットを撮影できますよ、というわけらしい。 |
「ありがとう、いい写真が撮れました!」 お礼を述べると、嬉しそうに笑う。続けて、彼女は ガイド本に載ってないような内容を日本の訪問者達に教えてあげたい、一流の案内人になるんだ、 そう言って仕事に対する謙虚な熱意と、自身の目標をする人間像をチョッと熱く 語りだした。その為に、様々な文献を読んで知識を得る努力を怠らないという。 勿論、日本語の習得にも余念がない。 『日々是勉強ですよ^^』 チョッと照れながら笑う仕草が、いじらしくも可愛らしい。 さらに、彼女はゆっくりと振り返り上目遣いで、小さく呟いてみせた。 『パンニャーって名前は、賢い、って意味なの』 |
とらバスにおける、1日半のスケジュールは終わった。 帰りのワゴンで ガイドから幾つかのオプション観光を紹介されたが、いづれも独りで行こうと思っていた 場所ばかりだったので、降車後、お礼と心付けのチップを渡し別れることにした。 「どうも有難うございました。では、さようなら」 『チョッと、待ってください。夜にカンボジア鍋の食事会があります 企画会社のツアー内容に含まれていますので、お迎えにあがりますよ それまで半日、市内の観光でもしていてくださいね』 |
さて、 夜までは時間が余っている。どうしたもんか? 昼飯を食べて一眠りをした後、市内の散策をすることに決めたのだった。 |